遥かなる雨音の調べ #バオバブ

 

第1夜

 

厭な予感で目を覚ます。

思った通りだ、
嗚呼、窓を叩く彼(あ)の憂鬱は!
ボストンのミスカトニックは快晴、と、
昨日の新聞では読んだのに、
私の家には!
私の家の窓には!

今日の予定など、知った事か!
明日をも知れぬ我が身に、
彼の雨 ーと呼ぶ他無いー で外にも出られない!
私の通信機器(アイフォーン)は鳴らない儘(まま)、
誰からの連絡を受ける事も無い。
幸か不幸か…。

 

私を嘲笑う声が聞こえる。
彼の書だ。
アーカム大学の図書館から持ち出した ー其の記憶は無い、正確には、私に追いて来たー、狂えるアラブ人の書、
彼の表紙が!私を嘲笑っているのだ!
しかして思い出せずに居る、此の感情。
郷愁にも似た、此のー。
私は既に、狂って居るのか?

 

沈黙は金、正にさうだ、少しでも物音を立てれば、「雨」は私に降り注ぐだらふーーー。
私の沈む心に反比例する様に激しく為る。
今日はまう…。
私は、総(すべ)てを閉ざす様に、毛布に包まった。


第2夜


新鮮(フレッシュ)な炭酸飲料(ジンジャーエール)を飲み干し、動転した気持ちを抑える。
嗚呼、翔べるなら、翔べるのならば、
今直ぐに貴方の元へと、
さう、赦しを請いにー。

 

嘗(かつ)て読んだ、禁断の魔書 ー狂えるアラブ人、アブドゥル・アル=ハズレッドの、あの書では、断じて、無い!ー に出てくる、ピイタ・パンなるオトナコドモのやうに、天宙(そら)を自由に翔ぶ事を夢想したものだが、今は、今は其んな余裕すら、無い。

 

落ち着け、落ち着くんだ。
彼の魔書、他に、他に何か、
現状を覆せる何かを。
其れとも、いっそのこと、彼の者に全部奪われて仕舞うかーー。

 

恐怖に支配された私の産む、諦めにも似た感情。
また、雷鳴が天宙に響いた。
気休め程度に持って居た、護身用の大針(アイスピック)を落とす。動転して居る。

 

彼の古の者も、恐らく、
同じ天の咆哮を、聴いて居るのだらふ、或いは、彼の古の者がーーー。

 

第3夜

 

どんなに亡(わす)れ様としても、今は後悔と、
彼の者の影だけが憑き纏う。

何時もなら気にも留めぬ様な、
彼の音!音!音!
何と不規則な!瀆神的な!音!
窓を叩く音!
耳を引き千切って仕舞おうか!

 

嗚呼、もしも彼の時!

 

ー貴方が夢に出て来た彼の時に!ー

(アーカムの図書館が漆黒の大男に破壊された時に?)

 

貴方は今、何を思って居るだらふか。
同じ事ならば、時間も場所も超えてー。

有り得ない。

目の前の天宙には、彼の古の者が、
覆い尽くして居るのだから………。

 

f:id:hynm_jbhfc:20170922143505j:image

 

HMV×MAGiC BOYZ presents 『カニへ西へ』 Vol.3

2017年9月24日(日)
[会場] 代官山UNIT
開場 15:00 開演 16:00

[出演] MAGiC BOYZ / JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB
SPECIAL GUEST:藤井隆

[チケット] 3,780円(税込)

■ LINEマイメン先行(先着)
2017年9月11日(月)18:00~9月14日(木)22:00
■ 一般チケット発売
2017年9月16日(土)10:00~
ローチケ:Lコード 76638
ぴあ:Pコード 345-410
e+:http://eplus.jp

 

 

第4夜

 

我ハ、 数多ノ 惑星(ホシ)ヲ 翔ル者也。

汝ノ司ル 大地ニ、

我ハ、惑星ヲ避ケ、

雨粒ノヤウニ降リ注グ。

思イ出スガ好イ。

思イ出スマデ、降リ止ムコトハ無イ。

其ノ名ヲ、思イ出スガ好イ、

サァ、汝ノ名ハ、ナイア・・・ーーー。


酷い雨音で上手く聞こえない。
 ー尤(もっと)も、雨音では無いがー。


ひと時の襲来を防いだとて、急場凌ぎの防御壁など、簡単に破られて仕舞う。況(ま)してや、彼の冒涜的な、神を愚弄した様な存在に対し、無回転の防御など、濡れた指で障子を触るに等しい。
太陽が此んなに恋しかった事が、嘗て有っただらふか?
梅雨の長雨も、火星の夜明けも、此れ程迄に暴力的な、瀆神的な遮陽とは思わないだらふ。

 

嗚呼、何故、何故私なのだ!

 

神は私をお見捨てに成られた!

 

夢にまで干渉して来た貴方から手渡された、ボロボロの溝円状洋皮(ヴァイナル)ー此れが我が身を助けて居る!貴方が!ーを天宙に翳(かざ)しながら、我が身に降り掛かる禍(わざわい)に呪詛を吐いた。

 

私は只、私はー。

 

三度、恐らく最期であらふ彼の者の"飛来"に備え、溝円状洋皮を翳し、最早、真っ直ぐ立つ事も儘ならぬ脚に力を入れた。

 

"私はー"

 

煌(ひか)る影が、私と、私の頭上に居る古(いにしえ)の者を写した。

 

"私は?"

 

暫く、静寂が私を包んだ。

恐る恐る、溝円状洋皮を、
そっと私の上から退かして見るとー。

天宙から降り注ぐ数千万の槍ーとしか名状し難いーが、私を包む様に静止して居るのだ!

 

何たる事!

 

何時の間に闇を造る雲は遠ざかり、
天宙は煌(きら)めいて居る。

 

太陽?

 

神か!

 

否!

 

貴方は!

 

貴方は夢では無い!

(イア! シュブ=ニグラス!)

 

思い出した。
思い出したのだ、総(すべ)て。

 

煌る影に、"私"と、私の頭上に居る古の者が写った。

 

"私"は、大誤算が産んだ運命とやらに感謝した。

 

思い出したのだ、

 

私は!

 

私の名は…

 

「私の名は、

ナイアルラト・ホテプ。

大地と天宙を統べる者ー。」

 

第5夜

 

しとしと、窓の外、アスファルトの匂いとー。

思い出すのは誰のこと?

そうーーーーー。

 

 

 

コズミックホラーに挑戦してみました。

 

ジャッッッッ!!!!

 

 

さいご、ほんの一瞬だけ、片桐アナが。